ある郵便事業のお話

ぼくは少々、郵便関係には詳しいです。
郵便絡みで仕事をさせてもらったことは多々ありますし、大きな不利益を被ったこともあります。
今日はそのうちの一つを書いてみます。

2008年――つい去年のことです。
数年前にぼくの会社の監査をやってくれていた公認会計士からの紹介で、名古屋の、ある郵便関係に携わる企業の仕事を受注することになりました。ぼくは新規事業整備のコンサルティングの仕事もしているものですから、そこの郵便事業の業務フローの構築を請け負うことになったのです。
その会社は名古屋にマンションを借りてくれたりしたので、週の半分は東京、週の半分は名古屋という忙しない生活を送ることになりました。おかげでこの時期ほど多忙な時期はありませんでした。
この会社、郵便事業を始めるまでは泣かず飛ばずの訳のわからない会社だったのです。しかし郵便事業を始めてから、ふってわいたように突然、月に億単位の利益を上げ始めることになったのでした。社長さんは一度倒産を経験していて、そこからの華麗な復活劇です。

さて、郵便には、さまざまな制度があります。
先に出版させて頂いた『雷撃☆SSガール』の最初に登場するビジネスモデルは、この会社のものを幾らか形を変えているだけです。正確には違いますが、できるだけ簡略化し、かつ幾つかの部分を誇張して書いています。内容に勢いがつくようにアレンジは加えているので、その辺はご了解のほどを。

ただし、またもやこの話にはオチがつきます。オチがついたので、SSガールに利用させてもらいました。それに、オチがついたので、こうしてブログにも書いてしまいます。
結論を言うと、ここの社長、脱税で捕まりました。
確定した部分だけで10億単位の巨額脱税で、実態はもっと大きな額をやっているはずです。
しかし、これは単なる脱税ではありません。色々と、複雑怪奇な事情が絡み合っています。
刑事事件としてやれたのが脱税部分であって、もっと色々な事情が絡んでいました。

どこまで書いていいのかな。
もし当局からの細部にわたる詳細な指摘があれば、本投稿を削除するかもしれません。
(投稿内容に自ら疑念を持っているわけではなくて、当局と争うほど勇猛果敢でもなければ、そんな暇人でもありませんから)

ここの社長さん、郵便局の方々と、とても親しい関係を構築していました。まぁ……察して下さい。
この会社は、日々、途方もない量のダイレクトメールを持ち込みます。それこそ、数百万通単位です。
そういうことが続いて、次第にここの社長さんは、持ち込んだダイレクトメールを直接、集計する機械まで持ち込むようになっていきます。郵便局の方も日中の忙しい時間帯ですし、気心が知れた仲なので、気軽にその社長が出入りすることを許します。そこは人間同士の呼吸として、わかって頂けるのではないでしょうか。
そこで、持ち込んだダイレクトメールを集計する機械にかけるのですが、その社長はダイレクトメールを流した後、勝手に通数を記入するようになっていったそうです。例えば300万通のダイレクトメールを流した日には、130万通と記入するわけですね。
すると……あら不思議。170万通が無料で出せてしまうのです!
この利益は強烈ですよ。詳細は省きますが、これは驚異的利益です。

本来ですね、こんなことしなくても、十二分に儲かりまくっていたのです。
株式公開の準備も進めていて、ジャスダックにまで持って行けると思っていました。
でも、儲けを上回る利益が目の前にある誘惑に、抗しきれなかったのでしょう。
こんなことが続いていき、ついにバレてしまう時がやってきます。
バレたのはどうしてでしょうね。本件に関して、数字が合わないというキッカケではないと思えるんですよ。なぜなら、一度カウントを終えて他の郵便物と混じってしまったものを、再度カウントするわけではありません。それに、流れるように何千万通と郵便物が通り過ぎていく中、そんなの把握しようがないですから。
この行為を知ることが可能だったのは、自ら膨大なダイレクトメールを持ち込んでいた社長さんと、局員の方だけです。ですから、義憤を感じた局員の方が告発したのかもしれません。そこは不明です。

厳密に言えば、この社長だけでなく、多方面に問題が発生するはずです。
郵政には独自の監督機関があり、局内の不正を取り締まる部署があります。しかし、これは不正なのでしょうか。不正と言えば不正かもしれませんが、本件だけ抜き出せば、局員に悪意はないですよね。それに贈賄を証明することは困難ですし、そもそも贈賄があったのかどうかもわかりません。業務上の落ち度はあったにせよ、完全な善意だったかもしれません。それに、不正行為を告発したのが局員の方だったとするなら、局を責めるのは酷というもの。難しい問題です。
しかも、誰かが著しい損害を被ったかというと、どうでしょうね。被害者は郵便局ですけれど、落ち度がまったくないわけではないから、郵便当局がこれを指摘するのも簡単ではなさそうです。
兎にも角にも、本事件は、この社長の脱税問題だけで落着することになったようです。だから本来は決して脱税事件ではないのですが、表向きには巨額の脱税ということでニュースになりました。この脱税は全国ネットでテレビにも流れましたね。

ぼくが文句を言いたいとすれば、この社長、それだけ儲けまくっていたのに、なぜ少しもボーナスをくれなかったのかということです(笑)
そりゃ悪くない費用を頂いていましたが、そんなものは雀の涙といえるほど儲けまくっていたにも関わらずです。
しかも最後の方は、関係各社への支払いが滞り、ぼくも費用を踏み倒された一人です(笑)
さらに末期は、会社内に派閥ができて腹心だった人がクライアントを奪って勝手に独立したり、広域暴力団の陰がちらついてきたりと、それはもう由々しき有様でした。
ぼくはあくまで外部の請負コンサルだったので、どうでもよくなりましたね。取締役になるという話もありましたから、受ける前で良かったです。
巨額のお金はどこへいってしまったのでしょうか。まぁ、想像はつきますが。

だから去年までSSガールに記載の方法を応用して事業展開すれば大変な利益が出せましたし、実際、名古屋の会社の二番煎じで、ビジネスモデルをパクって同じ形で始める会社が相次ぎました。
しかし今現時点、この事件の影響のおかげで、この方法は厳しく監督されるようになりました。ビジネスモデルをパクった会社は次々と事業を変える必要に迫られ、廃業したり、いささか危険な郵便ビジネスに進出していく会社も出てきました。
しかも、この事件に加えて、郵政民営化の影響もあります。
郵政民営化で郵便局の中央集権化が進み、局員の自由裁量権が狭まりましたので、このようなお目こぼしが困難になったのです。

(※ もし他の郵便事業に興味があるという事業家の方がいたら、ぼくまでお声をおかけ下さい)

一応、関係各所にかなり気を遣って書きました。問題ない範囲かと。
もっと書きたいことがあります。ですが、あまり長くなるのもどうかと思うので、この辺で筆を置いておきます。
なんだか2つ続いて刑事事件絡みが続いたので、ぼくの周りは刑事事件で溢れかえっているように錯覚されるかもしれませんが、誤解です。
多いことは否定しませんが、そういうタイプもいるということで。
ほとんどは立派な方ばかりです!